絶対にわかっていなければならないことは
●家庭でできる歯周病予防はブラッシングだけ。薬用歯磨剤や洗口剤(一部の薬品を除いて)期待し過ぎてはいけません。歯ブラシでいかに歯垢(プラーク=細菌=歯クソ)を落とせるかにかかっています。
●歯ブラシのCMでポケットの中に歯ブラシの毛先が届くことを売りにしているものがあります。しかしこれは到底期待できません。届いたとしても1ミリ程度でしょう。
●しかしポケットはあまり問題のない方で2~3ミリ、 やや進んで4ミリ、5ミリ。
かなり治すことがかなり難しい進行した歯周病は7ミリ以上という深さになります。
●ポケットの中は左の図のようになっています。
出来もしない歯のポケットの中を全周にわたってブラシの毛先を入れることを考えるより、いかにポケットの入り、つまり口の歯と歯肉の間をきちんと磨くかにかかっています。
ポケットの入り口の細菌を出来る限り少なくすることが歯周病の進行を止める最大の方法です。
入り口に歯周病菌が多く残っていると、ポケットのそこの方にはかなり悪どい細菌が多く住み着くようになります。
それが、入り口をきれいにしてやるとそいつらも徐々に消えていく。なにやらどこいらの人間の社会のようですね。
●歯周病から話はそれますが、むし歯予防のために徹底したブラッシングをしてもむし歯を防げるとは限らない。むし歯は他の要素とともに総合的に取り組む必要がある。
右の図は一般的なブラッシングを示したものです。
特に右の図は歯ブラシや歯磨き剤のテレビコマーシャルでよく見ますよね。 バス法といいます。インターネット上で拾ったいろいろなバス法の説明図ですが微妙に違うでしょ。どれが本当かわからない(笑)
いずれにしても、実はこの磨き方には落とし穴があります。
一所懸命磨いた方のほとんどが傷をつくってくるということです。そしてその結果この方法で磨くのが苦痛になって自己流に戻ってしまいます。一方、我慢して磨き続けると傷のところの歯肉が退縮して、根が出てしまう事態になってしまいます。
右の図の左側はローリング法です。歯肉から歯に向かってかき上げる方法です。昔流行った時期もありますが、この磨き方の最大の欠点は、一番磨いてほしい歯と歯肉の間が磨けないことです。図中央の位置では毛先は実際にはすばやく通過してしまいます。
右図はフォンズ法歯の表面をくるくる円を描くように磨きます。これも同じように歯と歯肉の境を通過してしまいます。
そうしますと、右図の歯に直角に歯ブラシをあてるスクラビング法、歯の間に毛先を入れるつまようじ法がなかなかよいのではないかということになります。
ただ、歯をよく見ますと下図のように歯ぐき近くは内側に丸まっています。
ということは正確に歯にあてようとすると少し歯肉側からあてなければならないことに気が付くでしょう。そこでみつもり歯科医院のブラッシング法になるのです。
これは簡単にいうと歯と歯の間、歯と歯肉の間を磨く方法です。
ということはつまようじ法に使う特殊な歯ブラシもいらないということになります。
歯周病予防のためには歯周病菌をきちんと除去しなければなりません。歯周病菌はどこにいるかと言うと、歯と歯肉の間にいるわけです。このときに小さい頃のまんま歯の頭だけを磨いていたんでは、「私磨いてたんですけど」といっても、磨いてないに等しいわけです。歯周病予防にはなりません。
むし歯予防から歯周病予防のブラッシング方法へ慣れている方法を切り替えていくには、磨くたびにどこを磨いているかと意識をしながらがどうしても必要です。
正しい圧(強さ)で磨くとはどのくらいだと思いますか?一般的には200g~300gといわれ、弱すぎると歯垢(細菌)が落ちないし、300gを超えると痛みが出たり、歯や歯肉が傷付きます。
しかし、自分が実際どのくらいの力で磨いているか分かりませんよね。そこで私は右写真のようにキッチンハカリにお皿をテープで貼って、その上を磨いてみました。すると私の歯ブラシの圧は180g~220gでした。
サンスターで電動歯ブラシの毛の硬さと圧を比べました (右表)。興味深いのは歯垢が一番取れたのは太さ0.16㎜の柔らかめ歯ブラシだと150gなのに対し、太さ0.25㎜の硬い毛は300gもの強い圧力が必要だったことです。
硬い歯ブラシは強く押し付けないと毛が硬くてすべての毛先が歯にとどかないのです。ということは、硬い歯ブラシで正しく磨くと、最初にも書いたように間違いなく歯や歯肉が傷が付くってことになりますね。柔らかい歯ブラシでなければだめなのです。
ちなみに当院の講師で、日本でも有名な歯科衛生士遊佐典子氏に確認してみたところブラッシング圧は150gだそうです。
あなたはどのくらい歯磨きに時間がかかりますか?
数年前、私が患者さんの歯を磨くとほぼ4分30秒でした。ところが最近計ってみると5分30秒を超えています。私のブラッシング方法の何が変わったのかというと、当初私は1カ所(1本ではない)を10回磨いて次に移っていました。しかし今は歯周病検査の結果を参考にしながら、出血の多いところや溝の深いところを20回から30回に増やしています。
大切なのは時間ではなく、手厚くケアしなければならない部分を意識することです。ブラッシングが、ただの儀式にならないよう口の状態を把握しておくことが肝心せす。
要は、患者さん自身の中に予防ではなく、自分で治すつもりで磨けるかどうかです。
最近お伝えしていること。それは、歯周病の進行したところ、磨きにくいところを「まず最初に始める」、そしてそこは「磨くことだけに集中する」ということです。
全部の歯に意識を集中して磨いてください…といっているのではありませんよ。
いろいろなブラッシングの体位を試してみたところ、上の絵のように上を向いて磨くのがいちばんよいということに気がつきました。立ってもいいですが、基本的にはイスやソファに座るのが磨きやすいと思います。上を向くことで、口の中にある程度唾液がたまっても磨き続けられます。奥歯の内側などながら磨きではなかなかきれいにならない場所は上を向くことで、舌が少し奥に下がり、奥歯を磨いても歯ブラシがじゃまにならなくなりました。
な~んだって?全部が磨きにくいわけではありません。難しいのは半分ですから、たった2~3分で済みます。周りのことには気をとられず、最低これだけは集中して意識して磨きましょうよ。ここが終わったら簡単な部分はテレビを見ながらであろうと、本読みながらであろうとお好きにどうぞ~
ブラッシング後、細菌がもとの状態に戻るのは48時間と言われています。とすると2日に1回?習慣づけからすると1日1回。
いつがいいかなということで、「金」は夜。磨いた後は何も口にしていないことが条件。寝ている間は唾液が少なくなって、歯周病もむし歯も危険度が増しますからね。
「銀」は昼食後。次の食事まで長そうだから。
「銅」は朝食後。食後は次の食事まできれいな状態が続くからいいですね。
まあ1日1回丁寧に磨けば入賞でヨシとしましょう。なんせ3回以上磨いていると胸を張っている人でも、よくよく見るとけっこう歯垢がたまってたりして、これでは一日10回磨いてもなかなか効果はあらわれないでしょうね。
いつも歯間ブラシまでしていると時間かかっちゃって大変という方の口をのぞくと、歯間ブラシを通している穴だけはきれいでその周りには歯垢がべっとり着いていたりする。そういう時には「歯間ブラシをしばらくやめてみましょう」と提案します。本来補助であるはずの歯間ブラシにとらわれてしまって歯ブラシがおろそかになっている。本末転倒。がんばれば歯ブラシだけで8割以上はきれいにできるはずですから、そのくらい磨けるようになってから再開しても遅くないです。